白内障手術のリスク

手術中に起こりうること

現在の白内障手術は術中に大きな問題を生じることはなく、余程進行した白内障でない限り非常に安全性の高い手術です。その高い安全性のおかげで、現在日本全体で年間100万件以上行われており、外科手術の中でも最も治療数の多い手術の一つとなっています。
しかし、外科手術である以上、合併症は可能性がゼロではありません。例外的ですが以下のような合併症は数千件~数万件に一例程度の頻度で起こりうると言われています。

  • あらゆる目の手術で起こりうることで、メスを入れた瞬間に、目の中で大出血をして失明する危険性があります。ただし、わずか3mm以下の大きさで切るだけですので、当院ではそのようなことが起きたことは一度もございません。
  • 非常にまれですが、一度に眼内レンズ移植が出来ず、日を変えて後日再手術が必要になる場合もあります。水晶体嚢(すいしょうたいのう)とよばれる袋の中にレンズを移植しますが、この袋は細い蜘蛛の巣のような糸(チン小帯)で吊されています。この袋や糸が弱い方の場合、手術中に袋が破れたり、固定している糸がはずれたりしてしまうことがあります(発生の頻度は1%以下です)。
    その場合、レンズを特殊な方法で固定する手術が必要となる場合があります。こうした場合は提携施設で入院を前提に万全の体制のもと、再手術を受けていただきます。最終的には、よい視力に回復しますので、ご安心ください。
その他、手術後に起こりうること
眼圧上昇
一過性ですが、術後眼圧が上がってしまうことがあります。ほとんどの場合、1週間以内には下がります。眼圧を下げるための点滴、目薬や内服薬を処方することがあります。
術後感染
白内障手術の切開創は3mm以下と非常に小さいですが、手術後にそこからばい菌が入ってしまうことも考えられます。発生頻度は0.1%以下と言われています。そのため、少なくとも1週間は汚れた手で触ったり、目に水が入ったりしないように気をつけてください。
1ヶ月程、保護用メガネの使用をお願いします。
のうほうようおうはんしゅ
まれですが、手術後しばらく経ってから、網膜の中心部分(黄斑部)が腫れてだんだん視力が落ちてしまうことがあります。予防する目薬をお渡ししますので、目の調子が良くても忘れずに点眼してください。
角膜内皮細胞減少
角膜は黒く見えますが、実は透明です。元々角膜が弱い方は、手術のあと内皮細胞が減って、腫れて白く濁ってしまうことがあります。その可能性があるかどうかは、手術前に確認します。
後発白内障
術後数ヶ月から数年経つと、レンズを固定している袋(水晶体嚢)が濁ってくる場合があります。
これは術後一年以内に2割くらいの方に起こりますが、視力が低下した場合は、レーザー光線を2、3分ほど当てます。痛みもなく簡単に治せますのでご安心ください。その後再び濁ることはありません。
見え方の変化
乱視
乱視の原因には角膜(黒目の部分)と水晶体の2つがあります。手術で水晶体の乱視はなくなりますが、角膜の乱視は残ります。
そのため、乱視を補正するためのメガネが必要になる場合もあります。角膜乱視が強い場合はレーシックで治療できます。
度数
眼内レンズの度数は、目のサイズを正確に測定して割り出します。9割以上の方は予測どおりピッタリで、術後、メガネなしで、遠くまたは近くが見えるようになります。
しかし、わずかに予測計算と度がずれる場合があります。その場合は薄い老眼鏡や遠く用のメガネが必要になる場合もあります。
度数ずれで期待した視力に達しない場合はレーシックで調整することが可能です。
色の見え方
水晶体の濁りのために手術前は黄色っぽく、または白っぽく見えていた物の色が、急に10代や20代の見え方になり視界が青っぽく見えてびっくりされる方もあります。はじめは戸惑うかもしれませんが、10代の頃はこのように見えていたんだな、と気にしないようにしていれば、だんだん慣れてきます。
まぶしく感じたり慣れるのが難しい場合は、専用のサングラス効果のあるメガネを処方させて頂きます。
飛蚊症
手術後明るくなったものの、飛蚊症を感じる場合があります。これは目の中の硝子体とよばれる部分の混濁で、老化現象により起こります。
ふわふわ見えるもので、手術前は気づかなかった飛蚊症を感じることもありますが、元々目の中にあったもので悪いものではありません。
眼底異常
白内障の手術をしても、目の奥のフィルムにあたる部分の網膜や神経などに問題がある場合は、視力が出にくいことがあります。
ただし、目の前に視力を邪魔していた濁りが無くなることで、手術前よりは明るく見やすく感じるでしょう。

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